皮膚炎(アトピー性・かぶれ・脂漏性等)

アトピー性皮膚炎

よくなったり悪くなったりを繰り返す、左右対称で、痒い、乳児では2ヵ月以上、それ以上の方では6ヵ月以上続く、慢性的な皮膚炎です。目や耳のまわり、首、肘や膝のくぼみなどによくみられます。かゆいためにかき壊していると、どんどん拡がり悪化します。

・ 皮膚の乾燥とバリアー機能の異常があり、そこへ様々な刺激やアレルギー反応が加わって生じると考えられています。気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎などの家系の方が多いです。遺伝、生活環境、アレルギーなどが複雑に関係しています。
・ 80%は5歳までに自然に軽快しますが、軽快しないで持続しながら悪化するタイプ、一旦軽快しても思春期頃に再発するタイプなど経過には個人差があります。
・ 治療はバリアの働きを補うため保湿剤、皮膚の炎症を抑えるためステロイド・免疫抑制薬の塗り薬、痒み止めの飲み薬、光線療法などを使用します。治療をきちんと行えば、治った状態を保てます。
・ 塗り薬の量は、人差し指の先から第一関節まで出した量が約0.5gで、両方の手の平に塗る量に相当し、1FTU(finger tip unit)といいます。ローションだと1円玉程度の大きさです。少ないと十分な効果が得られず、逆に多いと副作用が出ます。ステロイドの塗り薬の副作用としては、皮膚の萎縮、血管拡張、毛のう炎、多毛などが主なものです。また、重症か軽症か、年齢、部位などで塗るステロイドの強さを使い分けます。
・ ステロイドの塗り薬は1日2回塗ります。症状がよくなってきたら、自己判断で中止せず、徐々に塗る回数を減らし、1週間に2、3回程度塗って、いい状態を保つようにします。強く擦り込むと皮膚にダメージを与えるので優しく塗りましょう。また、ステロイドの飲み薬にみられる高血圧、糖尿病、胃潰瘍、骨粗鬆症、精神症状などの副作用は塗り薬ではほとんど見られません。
・ 痒み止めの飲み薬の副作用としては、眠気、だるさなどが見られる場合があります。
・ 免疫抑制薬の塗り薬(プロトピック軟膏)は、使い初めにほてり感やヒリヒリ感がでることがあります。保湿剤と併用したりして抑えることができます。また、使い続けて症状がよくなってくるとなくなります。プロトピック軟膏はステロイドホルモンではない免疫抑制薬ですので、ステロイドホルモン作用による副作用はありません。
・ ガイドラインでは「眼周囲や眼瞼皮膚にステロイド外用薬(特に強いランクのもの)を使用する際は、量や使用期間に注意するほか、タクロリムス軟膏への切り替えも検討すべきである」とされています。プロトピック軟膏は眼圧上昇の副作用の心配がなく、眼の周囲にも高い効果が確認されていますので、目に入らないように注意しながら使用していただければと思います。
・ 生後、出来るだけ早い時期から、全身に保湿剤を塗るだけで、アトピー性皮膚炎の発症率を半減させ、発症したとしても重症化を防ぐことが期待できます。もし、湿疹が出た場合はステロイドで炎症を抑えます。
・ 食物制限による予防効果は得られないことが分かっており、妊娠中・授乳中の母親の食物制限は不要といわれています。
・ 悪化の原因を見きわめ、避けるようにしましょう。定期的な症状の観察と根気よい治療が必要となります。

接触皮膚炎(かぶれ)


・ 刺激性とアレルギー性の2つに分けることができます。刺激性接触皮膚炎は、洗剤や溶剤など、刺激の強い化学物質が頻回に皮膚に触れることでおこります。一方、アレルギー性接触皮膚炎は、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)によって引き起こされるものですが、何がアレルゲンとなるかは人によって異なります。
・ 日常生活で使われるさまざまなものがアレルゲンとなり、かぶれやかゆみの症状をひきおこします。やっかいなのは、原因となるアレルゲンの種類が幅広く、数も非常に多いという点です。原因となるアレルゲンは、日常生活であたりまえのように使われたり、触れられたりするため、多くの人は、アレルギー性と気づきにくいのが問題です。ぶりかえすかぶれ、長びくかゆみにお悩みの方は、もしかするとアレルギー性接触皮膚炎かもしれません。かぶれやかゆみを治療するには、原因となるアレルゲンをみつけだし、日常生活から取りのぞくことができるかを考えることから始まります。
・ 植物、金属、化粧品、外用薬、ゴム、洗剤など身の回りのほとんどが原因となりえます。一度使ったり、触れたりするだけなら問題がなくても、くりかえし接触するうちに感作(かんさ)(アレルギーの原因となる物質に対し抗体を作ってしまうことで、一旦感作されると原因アレルゲンの侵入により反応が生じる状態になること。)する可能性があります。そのため、以前は問題なかったからといって安心できません。また、何がアレルゲンになるかが人によって異なるだけでなく、その反応のでやすさにも個人差があります。部位や経過から原因物質を考えます。
・ 塗り薬でも、かゆみ止めや炎症を和らげる薬など他の成分が追加されているものもあり、配合されている添加物などで起きることがあります。そのため違う塗り薬でも同じ添加物が含まれているとかぶれることがあります。ジェネリックでは先発品と添加物が違うので、切り替える際は注意しましょう。
・ 原因と思われるものでパッチテストを行います。原因がわかり、接触しないようにすることが大切です。原因がわからない場合、避けることができない場合は治りにくいです。
・ 痒みを伴う赤み、ぶつぶつ、腫れなどが、原因物質が接触した皮膚に出てきます。
・ ステロイドの塗り薬で治療します。痒みや症状が重い場合は飲み薬を併用する場合があります。

パッチテストについて


かぶれ(接触皮膚炎)の原因を特定するための検査です。くりかえす皮膚症状、長びくかゆみの原因に遅延型アレルギー反応が関連していることがあり、それを調べる方法です。遅延型アレルギー反応は、何度もアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)と接触をくりかえすうちに皮膚を通じてアレルギーが成立し、そのアレルゲンに触れると翌日~2日後くらいに最も激しい症状が出現するようになります。このようなアレルギー性接触皮膚炎の原因を確認できるもっとも有用な検査法です。
検査の方法は、金属(16種類)や、使用している化粧品など原因としてうたがわれるアレルゲンをのせた専用シートを腕や背中に貼り、48時間貼布して皮膚から吸収されたアレルゲンが経時的に皮膚に及ぼす反応を調べます。
検査初日にアレルゲンを貼布、2日後に病院ではがして30分後に初回判定、翌日判定、翌週判定をします。またアレルゲンを皮膚に貼っておくことで、稀ではありますが新たにアレルギーを作ってしまうことがあります。アレルゲンとなる物質は非常にたくさんあるため、一般的なパッチテストでは、うたがわしい物質(たとえば化粧品や食品など)を持参頂き、それを専用シートにのせるという方法をもちいます。
検査結果によりアレルゲンを特定できれば、日常生活の中でその物質を避けることが可能な場合もあり、かぶれ、かゆみの予防や、悪化をふせぐ上で役立ちます。 ただ、日常生活の中で、いったい何によってかぶれ、かゆみをひきおこしているかは分かりづらいものです。そ
うした場合に参考となるのが、日本人がかぶれやすいものとして定められた「ジャパニーズスタンダードアレルゲン(24種類)」(日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会)です。パッチテストにもさまざまな製品がありますが、最近では、ジャパニーズスタンダードアレルゲン24種類のうち22種類があらかじめ2枚のシートにのせてあり、いちどに多くのアレルゲンを調べることができるものがあります。

パッチテストの流れ
1日目 ▶ アレルゲンを貼る
日常生活上アレルギーが成立している可能性のあるアレルゲンを貼付します。2日目 ▶来院はせず、貼付したままでお過ごしください。3日目 ▶ 結果判定(1回目)
受診してアレルゲンを剥がします。剥がした影響が取れてから(30分後)皮膚の反応を確認します。
4、7日目 ▶ 皮膚の反応を確認します。判定結果の説明をします。
検査の際に注意していただきたいこと
□ お薬を服用中の方は、主治医にご相談ください。
□ 検査前日と検査中はテスト部位に塗り薬や化粧品を塗らないでください。
□ 持参品の検査を希望される場合は、準備時間が必要ですので予めお声掛けください。 □ 本剤を貼った後、入浴は避けてください。
□ スポーツや激しい運動で汗をかかないようにしてください。
□ テスト部位を締め付ける衣類の着用は避けてください。
□ テスト部位に強いかゆみや水ぶくれを感じることがあります。掻きむしったり、勝手に本剤を剥がしたりせずに直ちに主治医へご連絡ください。
□ 本剤を剥がしてから判定が終了するまでの間は、テスト部位への刺激を避けてください。
ご了承いただきたいこと
□ パッチテストの結果、疑われるアレルゲンに対して陽性反応を示した場合は、テスト部位の皮膚に軽い赤みやぶつぶつができることがあります。
□ 陽性反応は20日後以降に出ることもあります。判定後、テスト部位に異常を感じたときは速やかに医師にご相談ください。
□ 判定後、速やかに治療をしますが反応が強く出るとしばらく反応が残存することがあります。
□ 一部のアレルゲンについて、テスト部位の皮膚が着色されることがあります。着色は2週間程持続することがあります。
□ 本剤により新たなアレルゲンにアレルギー反応を起こすようになる(感作される)可能性があります。

参考:e-アレルギー.com

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)

・ 顔が赤くカサカサしたり、きちんと洗ってもフケが出たり、頭皮がかゆかったりする症状が皮脂の分泌が多い場所にみられます。
・ 黄色のふけがついた赤い皮疹で、乳幼児や思春期以降に好発します。皮膚の常在菌が原因の一つです。皮脂を栄養として生きるカビの一種で、誰にでも存在しています。菌そのものや、菌による分解で生じた脂の成分による刺激や、菌に対する皮膚の反応により、ふけ、かゆみが発生します。
・ 治療はスキンケアやステロイド、菌に対する塗り薬を使用します。菌を抑えるシャンプーやリンス、ボディーソープもあります。

うっ滞性皮膚炎(うったいせいひふえん)

・ 静脈瘤や足の腫れが原因で膝下に皮膚炎ができます。他の所に広がることもあります。
・ 立ち仕事をする方やご高齢の方,とくに肥満の女性の方に好発します。
・ 治療は塗り薬、弾性ストッキング・弾性包帯の使用,静脈瘤に対する外科的治療などです。

自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)

・ 貨幣状湿疹,うっ滞性皮膚炎,接触皮膚炎,アトピー性皮膚炎,水虫など、ある場所だけにみられた病変が急に悪化し,痒い斑が全身に多発したもので、アレルギー反応によります。
・ 掻いたり、原因物質の全身投与などにより、血流を介して全身へ拡がります。

酒さ(しゅさ)

・ 中高年の方の顔に赤み、血管の拡がりがみられ、温度変化や飲酒で悪化します。痒みやほてり感、ひりひり感なども伴います。進行するとにきびの様なぶつぶつがでてきます。
・ 一般には30歳前後で発症し、症状の程度は個人差が大きいです。日光やストレス、刺激物、毛包虫の感染などが関連することもありますが、原因は不明です。
・ 根治的な治療はなく、飲み薬や塗り薬、抗生物質の服用などで症状をコントロールする治療を行いますが難治です。体重が増えるほどなりやすい可能性があります。
・ 当院ではレーザーによる治療も行っております。詳しくは下記よりご確認ください。

酒さ様皮膚炎(しゅさようひふえん)

・ ステロイドの塗り薬を長期間、不適切に使用した副作用で、塗ったところに一致して、酒さのような赤み、血管の拡がり、ぶつぶつがみられます。
・ 治療としては、ステロイドの塗り薬を中止します。リバウンドがおこり、赤みや腫れなどが悪化します。激しい場合は、ステロイドを弱くして、徐々に減らしていくこともあります。

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)

・ 虫さされ、皮脂欠乏性湿疹、アトピー性皮膚炎やかぶれなどで生じるコインのように丸くもりあがった斑で、痒いです。掻きこわすと、ジクジクして、離れた場所にも同様の湿疹ができることがあります(自家感作性皮膚炎)。全身に広がることもあります。
・ 肌の乾燥が原因のことが多いので、ご高齢の方によくみられます。とくに冬に多いです。
・ ステロイドの塗り薬で治療します。肌の乾燥を防ぐため、お風呂上りに保湿をしましょう。

慢性単純性苔癬(まんせいたんじゅんせいたいせん)

・ 中年女性のうなじやわきなどにみられる丸くとても痒い斑です。
・ 衣服による摩擦や金属アレルギーなど繰り返し加えられる弱い刺激とそれをひっかく行為を長年続けることによって生じます。
・ 治療はステロイドの塗り薬や痒み止めの飲み薬を使用します。

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美容皮膚科(自由診療)   当院では、しみ・そばかす・くすみのお悩みや、レーザー脱毛・アンチエイジング等の美容に関わる診療を自費診療で行っています。